木戸さんと仲井さん

あなたの聴覚を守り、覚醒させる──このコンセプトのもと誕生した、世界初の完全ワイヤレス骨伝導イヤホン「earsopen® "PEACE"」。「GREEN FUNDING」において日本におけるクラウドファンディング最高記録1.32億円を突破する支援金が集まるなど、大きな注目を集めている。最高品質のデバイスによる骨伝導のヒアリング体験は多くの人たちの音楽の聞き方を大きく変えるほか、聴こえに不安のある方のコミュニケーションにも役立つ。

実際、「earsopen® "PEACE"」には音楽用無線モデルだけでなく、聴覚補助用無線モデルもある。実際、聴覚障がいを抱える人にとって「earsopen® "PEACE"」はどういった存在になり得るのか。生まれつき感音性難聴を抱える仲井さんと、大学の先輩であり、下半身付随の障がいを抱える木戸さんが対談した。

リズムが体を通して伝わってくる

木戸:こうやって仲井くんと話すのは久しぶりなので、今日はとても楽しみです。改めてよろしくお願いいたします。仲井くんの感想を聞く前に、まず僕の感想を伝えさせてください。今回、初めて「earsopen® "PEACE"」を使ったのですが、とても感動しました。

うまく表現できているか分からないですが、すごく大きなオーディオが耳の裏にある。そんな感覚が味わえました。音に包まれている感じですね。

仲井:そういう感覚が味わえるんですね。自分はちょっと違う感じです。

木戸:今回、earsopen® "PEACE"を開発するBoCo社を紹介して、実際に使ってもらったと思います。最初、「自分は無理ですよ」と言って諦めていたと思うんですが、さっき少しでも音が感じられたと言っていて、とてもうれしかったんです。「木戸さんとは違う感覚」と言ってたけど、感音性難聴を持っている人からしたら、どういう感覚なんですか?

仲井:まず前提を話すと、自分は補聴器なしでイヤホンをつけて音楽を聞いても、音自体がそもそも聞こえません。少しでも音を聞こうとして音量をMAXにすると音漏れして周りに迷惑を掛けてしまいます。また歌詞も一切わかりません。

ただ、もともと、リズムをとったり、踊ったりするのは好きなんです。今までのイヤホンは何も聞こえないので使ってきませんでしたが、earsopen® "PEACE"は骨伝導で音楽が体を通して伝わってくる。そういう意味では、今までにない新鮮な感覚が味わえました。

木戸さん

障害をおってから体のケアに関心が増し、「聴こえを守る」というコンセプトに大いに共感したという木戸さん

木戸:なるほど。その感覚は仲井くんしか分からないものだと思うんですが、仲井くんからその言葉を聞いたとき、すごくうれしかったです。

仲井:正直に言うと......(笑)自分は聴力検査をする際、低い音は聞こえるのですが、高い音は全く聞こえない。earsopen® "PEACE"も同じで低い音は感じられるのですが。高い音は感じない。そのため、安室奈美恵さんの『CAN YOU CELEBRATE?』は聞こえませんでした。僕の場合、そういった制限はありますが、リズム感が楽しめるのはすごく良いです。

"いつもと違う"感覚を味わえることが大事

木戸:earsopen® "PEACE"のクラウドファンディングのページに書いてある、「骨伝導のヒアリング体験は、人間の使われていなかった能力、すなわち、第2の聴覚を呼び起こします」という文言がすごく良いと思いました。僕は事故にあって歩けなくなり、医師から完全まひと診断された。言ってしまえば下半身が使えない、ゼロの状態と言われているようなもの。

ただ、僕はリハビリを繰り返し、少しずつ動くようになってきました。ゼロではなく次のフェーズに確実に近づいている。であれば、その次、さらに次のフェーズにもいけるはず。いきなり完璧な状態になるのは無理だと思いますが、一歩ずつ前に進んでいることが希望となり、がんばっていける。仲井にとっても、earsopen® "PEACE"を使ったことで「今までとここが少し違った」という体験を味わえたことはすごく良かったんじゃないか、と思います。

仲井:確かに何もないより、何かあった方がうれしいですね。

木戸:また、僕は筑波大学で車椅子の開発をしています。この車椅子は立ったり、座ったりする動作を機械で行うのではなく、自分の力とバネを使って行う。自分の力を中心にして立つと骨が強くなるから、健康状態を悪化させない予防になる。健常者でもずっと車椅子に乗って生活していたら、不健康になると言われています。下半身が不自由であったとしても、自分の力で歩くトレーニングをしておくにもすごく意味があるんです。

耳について詳しいことは分からないですが、earsopen® "PEACE"を使って音楽を聞くことで耳を現状よりも悪くしない予防にもなる。感音性難聴を持っている仲井くんにとってはリズムを感じられ、耳が悪くない人にとっても耳を大事にしながら音楽が聞ける。

仲井:木戸さんは医師から完全まひと言われたけど、リハビリをして状態が良くなった。もしかしたら耳も同じような感覚だと思っているかもしれません。僕も昔はそうだろうなと思いつつ、何度か聞く練習もしたんですけど、これ以上耳の感覚を上げることはできない。昔は電話できるくらいの状態だったのですが、どんどん悪くなっていきました。

だからこそ、いまは耳を使うよりも、"聞く"という行為を別の感覚で補ったり、楽しんだりする方法を考えています。例えば、電話できないのであればチャットなど"視覚"で対応する。音楽は振動という"触覚"で楽しむ。耳を0%から10%、20%と状態を向上させていくことが難しいので、別の方法で補うんです。

仲井さん

デフフットサル日本代表として、大切な試合の前に音楽を感じてテンションを上げたいと語った仲井さん

木戸:例えば、今の時代はどんどんデジタル化が進んでいると思うけど、何か生活が良くなったな、と思うことはあります?

仲井:聴覚でいえば、分かりやすいのが音声認識です。GoogleやAppleの音声入力、アプリではUDトーク(ユーディートーク)。聞こえないからこそ、見る。音声認識で代表的なのは、その2つかなと思います。あと、昔の電車内はアナウンスだけでしたが、今はディスプレイがある。個人的にはあれもすごく助かっています。

こうした環境の変化とともに、接する人たちの態度が優しくなってきたと感じます。向こうから何か話しかけられて、自分が聞き取れなかったら、昔は「あぁ、なんでもない。」と言われてたんですが、ここ最近は減ってきている。個人的には、話かけてもらったのに「あぁ、なんでもない。」と言われるのが一番ショックなんです。時代の変化とともに障がいが理解されてきて、どういう対応がいいのかも広まってきている。それはすごくうれしいですね。

福祉機器だからこそ、カッコよく

木戸:仲井くんが仰るように、時代は変わってきたなと僕も感じます。障がいを抱えた人たちに対する理解が進んでいる一方で、ちょっとした気持ち悪さも感じています。

例えば、オーストラリアはバリアフリーなど"ハードな部分"の環境整備が日本よりも進んでいる。それは日本の国土の25倍もあるから、当然といえば当然で。東京がオーストラリアと同じことを簡単にできるわけがありません。ただ最近は障がいを抱えた人たちが評論家っぽくなってきているんです。

権利ばかりを主張していて、障がいを気持ちで乗り越えていく部分がない。そこが個人的には良くないな、と思っています。僕はよく「東横イン」のシングルルームに泊まるのですが、お風呂がユニットバスで段差あるのですが、そこを乗り越えるのが面白い。そして、その攻略法を人に伝えるのが好きなんです。そういった情報を発信して、そこを起点に議論が広まっていく方がポジティブな気がする。

木戸さん

仲井:そうですね。自分は株式会社ミライロの"ハードは変えられなくても、ハートは変えられる"というキャッチコピーがとても良いと思っていて。テクノロジーも障がい者を取り巻く環境を変えるひとつの方法ではあるけど、接する人たちの気持ちも変わっていけばいい。木戸さんが仰ったようにメディアでの発信や当事者がもっと動いて、知らない人たちと関わっていけばいいと思っています。

木戸:僕は過去に交通事故で脊髄損傷になり、医師から「一生歩けない」と宣告されました。その後、妻が中心となり、GREEN FUNDINGで「死にかけた愛するアホ旦那をもう一度歩かせたい!〜 Re:Walkプロジェクト 〜」というプロジェクトがスタートしました。このプロジェクトを通して、歩くリハビリが日本でできないことを知ってもらえたんです。

障がいで歩けなくなって、歩くリハビリが日本でできないことを知ってもらう価値がある。だからこそ、この記事を通して仲井が"耳が聞こえない"ことにも度合いがあることを知ってもらうのも大事だと思っています。

仲井:自分は健常者たちとの接点を持つ方法として、機器のデザインも重要だと思っています。前に乙武さんと話した時に乙武さんが仰っていたのですが、補聴器のデザインはパッとしないから多くの人に興味を持ってもらえず、結局どういったものか知ってもらえない。

木戸:たしかにデザインはすごく大事。福祉機器の多くはダサいデザインなのですが、健常者たちが「あのデザインはイケてるから使ってみたい」と思ってもらえたら距離はグッと近くなる。だからこそ、デザインはすごく重要だと思っています。個人的には車椅子『WHIIL 』のデザインは良くて、イケてる感がある。

仲井さん

仲井:補聴器ももっとカッコよくしたり、カワイくしたり、多くの人が興味を持つようにするべきかなと思います。前に補聴器をデコレーションした画像付きの投稿がTwitterでバズっていたのを見て、改めてデザインはすごく重要だなと思いました。

木戸:そういう意味では、earsopen® "PEACE"はすごくカッコよくて。普通に使いたくなるよね。

仲井:使いたくなります。

木戸:ぜひ使ってくださいよ。仲井くんだけでなく、デフサッカーをやっている仲間にもオススメしたら良いと思います。

仲井:オススメしたい気持ちもあるのですが、僕はたまたま低い音が聞こえているから良いかもしれないですが、音が全部聞こえない人もいる。それで誤解を招きたくない。

木戸:でも、仲井くんが世の中を悪くしたり、だまそうとしたりしてるわけではないので、真摯に思いを伝えれば、それでいいと思う。また、僕は低い音が聞こえる人もいれば、聞こえない人もいる。いろんなタイプの人がいることが分かるのが一番大事だと思う。

仲井:ありがとうございます。デフサッカーの仲間にも薦めてみようと思います。今日は久しぶりに話せてよかったです。ありがとうございました。

木戸:こちらこそ、ありがとうございました。

「先輩と後輩」という関係でありながら、初めてお互いが抱える"障がい"について話をした2人。最初は商品の使用感について感想を言い合うことから始まった対談だったが、気がつけば"障がい者を取り巻く環境"について話が広がっていた。テクノロジーの力で障がい者たちを取り巻く環境は確実に変わってきた。今後さらに必要となってくるのは、いかに障がい者たちに対するイメージを変えられるか。その鍵を握っているのは、障がい機器のデザインかもしれない。そんなことを感じさせられた。

仲井健人

1993年生まれ。生まれつき、車のクラクションがかろうじて聞こえる程度の聴力。
就学前から発音や日本語の練習を繰り返し、明瞭に話せるようになる。7歳からサッカーを始め、高校の時にデフサッカーを始める。筑波大学入学後、デフサッカー日本代表に選出され、国際大会に出場。現在はデフフットサル代表にも選出され、11月に開催されるデフフットサルワールドカップに出場。サッカー以外に、講演活動やクラブチームの運営、イベントのアドバイザーなど多岐に渡る活動を続けている。

木戸俊介

1986年神戸生まれ。筑波大学を卒業後、広告代理店で8年間勤務。
2015年4月4日、交通事故による胸椎損傷から下半身が完全まひ。退院後にアメリカ、オーストラリアでのリハビリ留学を経て、帰国後は独立してコンテンツプロデューサーとして活動しながら、NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト代表、筑波大学蹴球部プロモーションチーム、Re:Walk Project主宰、(株)スイッチオンサービス、(株)D&Iなど多方面の分野に携わりながら、『5足のワラジを履いてパラリンピックに出る』という目標に向かって活動を続けている。

earsopen® "PEACE"プロジェクト概要

earsopen® "PEACE"は、世界初・完全ワイヤレス(TWS)の耳を塞がない=鼓膜を使わない骨伝導イヤホンです。音楽用モデルと聴覚補助モデルをラインナップしており、若い方々や聴こえに不安のある方々など全世界の人々の聴こえを守り、覚醒させることを目指します。開発・製品化を目指しクラウドファンディングを実施中で、2019年11月現在、日本におけるクラウドファンディング最高記録1.32億円の支援を集めています。

BoCo株式会社:https://boco.co.jp/

BoCo株式会社は製品の基礎特許を有するゴールデンダンス社の技術を使い、SONYオーディオ事業部で開発・設計を行っていた音への強いこだわりを持ったメンバーが中心となって商品を開発しています。代表取締役をはじめ、異なる経験豊かな人材が集まり、今まで世の中にないものを日本で開発・製造することを目指し、世界初ハイレゾ級 骨伝導イヤホンを商品化いたしました。日本国内を代表できるトップクラスの高い技術を持つ会社として、経済産業省 「飛躍Next Enterprise」プロジェクトに採択されました。

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